今週のホワイトボードから 「咳喘息の誤解」
最近咳喘息という診断がなされた方を多くみます。よく話を伺うとゴミ箱的診断が殆どで、「?」がつくような状況です。例えば「5日前から痰がらみの咳があって、近医受診したら咳喘息と言われた」など誤解だらけです。
喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)や呼吸困難を伴わない慢性に続く痰がらみでない(あってもごく少量)咳嗽(8週間以上が厳密な定義、3~8週間であっても診断できるが3週間未満の持続では診断できない)、気道過敏性検査(開業医レベルでは検査が不可能)で軽度亢進、気管支拡張剤が有効(多くは吸入で行い、吸入後かなり楽になる)、以上で定義される病気です。参考所見としては血液検査でアレルギーが半分強に陽性で、アレルギー性鼻炎を半分弱に認めます。呼気ガス中の一酸化窒素濃度(FeNO)が上昇すればかなり確実です。ただしこの検査は特異度は高いが感度がいまいちです。アトピー性咳嗽という病気や後鼻漏症候群などと鑑別が重要です。治療は典型的喘息と同様に軽症から吸入ステロイド薬を中心に長期管理を行います。
過去のホワイトボードから大切な話題をピックアップ
「気管支喘息の呼気ガス一酸化窒素濃度による管理」
血圧の高い方は血圧を測定し、治療方針を考慮しますね。血圧を測らないで薬を出すことはありません。さて喘息はどうでしょうか?高血圧症の方の血圧測定に相当する検査が今までなかったのです。呼気ガス一酸化窒素濃度(FeNO)という検査が高血圧の血圧測定に相当する検査です。当院では7年前から導入し、淡路島では当院と県立淡路医療センターで稼働しています。この検査と臨床症状および所見でまず喘息かどうかを見極めます。喘息と判断したなら吸入ステロイドが必要かどうかみていきます。FeNOが高値であれば飲み薬は効かず、吸入ステロイドを選択します。吸入ステロイドを使ったなら、治療で症状が良くなりFeNOが低下するのを確認していきます。治療安定期になった患者さんが急にFeNOが高値になることがあります。その多くは吸入ステロイドを怠っているか、吸入テクニックが悪くなっている時(治療に慣れれば吸入テクニックも低下することが殆どです)です。気付いて是正すれば多くは容易く正常化します。もしFeNO 測定しなければ気が付かず、症状が出現してはじめて悪化の認識ができます。当院では大人は勿論、5歳以上のこどもに積極的に測定し、診断および適切な薬を決定し、症状やFeNOが安定化すれば減量中止しています。実際喘息薬を中止できる方も多くなっています。