難しい質問です。一応6ヶ月以降の乳児には接種は可能ですが、予防接種による抗体の獲得に対しては疑問の意見が多いようです。しかし効果は全くゼロではありません。乳児はインフルエンザに罹患しても軽症で済むことが多いのも事実で、また脳炎の確率も幼児に比べて低いといわれています。他に受けるべき予防接種も多いので、それらのことを総合して考えてください。心配な方は更に家族全員のインフルエンザ予防接種を行ってください。むしろこちらが優先されるかも知れません。
母乳栄養児ならお母さんが食べている卵がアトピー性皮膚炎の増悪に関与している可能性があります。この赤ちゃんは卵がアトピー性皮膚炎の原因ではありません。アトピー性皮膚炎がるということだけで血液検査を行うと、こういう事態は良くみられます。単にたまたま合併している即時型アレルギー(食べたら直ぐに蕁麻疹が出るという反応)を見ているだけです。乳児はこの合併が多いのが特徴でもあります。上手なスキンケア・ステロイド軟膏塗布を行ってもなお重症の方に限って、アトピー性皮膚炎の増悪因子としての食物を探すために血液検査をすることをお勧めします。最近湿疹が先にあり、湿疹の病変から食物アレルギーが成立するという意見があり、積極的に赤ちゃんの湿疹は治しましょう。
ガの幼虫の中で、有毒毛(毒針毛・毒棘)を持つものに触れた場合に生じます。ドクガ・チャドクガ・イラガなどが原因です。毒針毛に触れると初期には痒みの強いジンマシン様の発疹が出て、1~2日後には小さく赤く盛り上がった発疹が多発してきます。毒棘に触れると、皮膚に注入された毒液で電撃的な痛みが走り、ジンマシン様の発疹が出て1~2時間でおさまるが、1~2日後に痒みを伴った赤い発疹が出てくることもあります。毒針毛による場合は早期によく洗い流すことが大切です。局所にステロイド軟膏を塗ったり、範囲が広ければステロイドの内服が必要です。
確かに大抵の漢方薬は苦くなかなか上手に飲めません。ゼリーで一緒に飲みこむ方法でやっと服用できる子どももいます。中には甘い漢方薬もあります。小建中湯は飴が入っていて甘く、甘麦大棗湯は名前の中に「甘」の文字もあり、棗は「なつめ」のことで、小さな子どもさんも大丈夫な事が多いようです。確実に体内に入る方法は坐薬なので、当院では五苓散という吐き気止めの薬や、芍薬甘草湯という腹痛の薬を坐薬に作りなおして処方するという工夫をしています。
おそらくケトン性低血糖症でしょう。何かのストレス-この場合はウィルス性胃腸炎が可能性として一番多いのですが-がきっかけで血液のケトン体が上昇し、糖分が低下する病態です。ぐったりして元気がありませんが、この病気であることを判断して早めに点滴をすれば速やかに改善します。また治れば普段は何もなく、治療は必要ありません。小学生になれば自然に治っていきますので、慢性の病気としては心配要りませんが、ぐったりしている急性期の対応は必要です。
肺炎にも色々種類があります。原因が強い細菌(肺炎球菌やブドウ球菌)の場合、大抵は入院が必要です。この時、白血球・CRPが増加して、症状も強く出ていて重症感があります。ウィルスや弱い細菌が原因の時は、白血球やCRPが増えていません。重症感は無いことが多いようです。この弱い細菌の中にマイコプラズマがあります。乳児やお年寄り以外の肺炎で、開業医レベルでは一番多い肺炎です。入院を必要としないことがほとんどです。外来でよく用いられるペニシリンやセフェムなどの抗生物質は効かず、マクロライド系の薬が第一選択です(最近耐性と言って効きにくくなってきています)。10~14日服用していただきます。大多数は1週間ほどで元気になります。
除去テストにて卵が悪いといわれているのなら、卵がアトピー性皮膚炎の増悪因子の一つでしょう。さてアトピー性皮膚炎は多因子疾患と言われています。単一の原因で起こる病気ではないことに注目してください。まして食物は「原因」ではなく「増悪因子」と考えてください。増悪因子の一つですから、必ず食べるのを止める必要もないかもしれませんが、重症では痒い病変のために除去していただきます。十分栄養に気をつけてください。アトピー性皮膚炎の患者様において、食物は増悪因子ですから、食物は除去してもしなくてもゴールは変わらないという考え方が正しいと思います。
薬を飲ませるときに「甘いよ」と言いながら、薬を飲ませていたら、子どもは「お菓子」と勘違いするかもしれません。アイスクリームに混ぜてあげれば間違いなく子どもは「お菓子」と思うでしょう。数日の勝負の病気ならこれで良いと思います。「おかず」である納豆を「お菓子だよ」といって食べさせたら、「こんなにまずいもの」という反応になります。「薬」は「薬」なのです。薬の混ざったお菓子は決しておいしい「お菓子」ではありません。やがてこれでも嫌がってきます。「薬」ということが分かっている子どもにはごまかさずに飲ませるのが、やはり一番です。
一般的においしくない抗生物質はマクロライド系(エリスロシン・クラリシッド・リカマイシンなど)やペニシリン系(ワイドシリン・オーグメンチンなど)で、おいしい抗生物質はセフェム系(フォロモックス・セフゾンなど)です。薬価はセフェム系が一番高いのも一般的です。セフェム系の乱発で問題が起こってきました。抗生物質が効かない細菌-耐性菌が多くなってきているのです。最近セフェム系の薬の処方を意識して減らしている小児科医が増えてきています。必要なら処方はするべきですが、必要が無ければ抗生物質を処方しないか、他の抗生物質を処方しています。ご理解ください。
発熱は免疫力をアップさせて、細菌やウィルスと戦っている姿です。無理に下げるべきでないと言う考え方もあります。熱が高すぎると問題もあります。1つ目は発熱で水分すら摂取できなくなるという状態です。脱水になって余計にしんどくなります。一時休戦ということで、その間水分補給をしていっても良いでしょう。2つ目はどうしても親御さんの心配が強いことです。「熱が高いから肺炎になる」「熱が高いまま放っておくと頭がおかしくなる」ということをよく言われますが、まったく根拠はありません。実際的には38.5℃以上で解熱剤の使用を考えても良いでしょう。また最低8時間は空けてほしいものです。
病医院のしっかりした考え方、患者様達の協力があってはじめて出来ることであって、病医院だけあるいは患者様達だけでは不可能です。例えば「みずぼうそう」がどの様な病気かはお母さん自身が知っていないと始まらないし、病医院では事務レベルでの電話での対応がまず水際であるため、事務スタッフも知識・理解が要ります。この問題を解決するには病医院主導の強力なパワーが必要で、直ぐに出来るものではありません。当院は可能な限り余計な病気をうつされないように努力は惜しみません。
脱水状態にならないよう上手な水分・電解質補給が必要です。ORSというドリンクが最も適切ですが、アクアライトやアクアサーナがこれに一番近い電解質濃度のドリンクです。これでもやや薄く当院ではうどん汁や味噌汁と組み合わせて飲んでいただいています。人工乳は量を減らしてください。その分ORSなどで水分を補うのです。人工乳は間違っても薄めないでください。そもそも人工乳は元気な状態の赤ちゃんの主食ですから、普段の濃度で赤ちゃんの体のバランスが保たれるはずですね。しかし下痢などで電解質が失われている状態で、薄めるのはより電解質のバランスをわざわざ崩しているようなものです。
まず咳が痰がらみか否かを見分けてください。深夜眠っている時に咳があるか、もしあれば眠れているかが大切です。痰がらみで深夜に咳が無いなら、少し様子を見て良いでしょう。深夜眠っていて咳があれば何かあるかもしれないと考えてください(気管支炎・喘息・肺炎など)。眠られないぐらいになれば必ず小児科に受診してください。勿論随伴症状として高熱がある、嘔吐を伴っている、ぐったりしている、ゼーゼーと息苦しそうという症状があれば小児科受診はするべきです。
子どもの場合、ゼーゼーという呼吸が苦しくなる病態は喘息だけではありません。1回だけでは決して喘息と診断できません。欧米では原因が何であれ3回繰り返して、日本ではゼーゼーを起こす他の病気が否定されて2回以上繰り返して喘息という診断が下されていることが多いようです。ガイドラインによると、喘息と診断されても発作の頻度が1ヶ月に1回以上でやっと普段から行う基礎治療が必要です(それより軽くてもだんだん悪化があれば治療は考慮しますが)。ゼーゼーが出る他の病気にRSウィルス感染症があります。当院は冬季には必ずこの病気を調べています。一冬に100人ぐらいのRSウィルスによる下気道感染症があり、このうち1/4ぐらいにゼーゼーがあります。
確かにアトピー性皮膚炎にステロイド軟膏の使用は色々言われています。それはアトピー性皮膚炎が慢性の病気だからです。延々と使用することによる副作用が取り沙汰されています。しかし急性湿疹は急性ですからだらだらと塗ることはありえません。逆にしっかり急性の時期に治さないから慢性に移行し、ひいてはアトピー性皮膚炎の素因がもし基本にあれば、アトピー性皮膚炎になってしまう可能性もありえます。アトピー性皮膚炎のステロイド軟膏の治療もきちんと使い方を守っておれば副作用の心配はまずありません。
咽の痛み・発熱が大抵は見られ、苺状舌や発疹が時に認められます。有効な抗生物質を服用すると、翌日には殆どが解熱しています。3~4歳以上は典型的な症状が出てくるのですが、それより小さい子供ははっきりした症状は現れ難く、通常の風邪とほとんど見分けがつきません。小さい子どもの場合には、時に皮膚の症状が出てくることがあります。鼻の入り口にただれが出てきたり、とびひ様の発疹も見られることがあります。とびひ様の発疹は、80%の子どもは基礎にアトピー性皮膚炎があり、繰り返し発症することが多く、夏に多いのが特徴です。
最近は西洋医学の医者でも、漢方薬を積極的に処方する医者が増えてきました。しかしまだまだ全ての医者がという訳にはいきません。かつては煎じる方法の漢方薬しかなかったのですが、多くの製薬メーカーが服用しやすいような便利なエキス剤を出しています。漢方薬は一人一人の個性・体格や病状に合わせて処方される薬なので、同じ病気の全ての人に同じ薬が効くという訳には行きません。また病気の時期によっても異なってきます。きちんと専門の所でじっくりと診察を受けて処方してもらってください。