RSウイルス感染症での当院の治療方針その1
RSV下気道感染症の気道症状を便宜上3つの機序から整理した。一番目は最も多い機序と考えられる気道分泌物による症状である。ほとんどの患児では高粘度の鼻汁が長く続く。下気道では粘液腺からの分泌亢進による喀痰、ならびに気道上皮細胞の脱落による細胞残渣が生じるため、DNAの豊富な大量の気道分泌物が存在する。RSV細気管支炎にRecombinant human deoxyribonucleaseの吸入療法が有効である報告から分かるように、DNAが豊富な粘度の高い気道分泌物が本症の特徴である。大人と違って鼻汁や喀痰の排除は、小さい子どもにとって自力では不可能である。外来レベルでは診断を早期に行い、初期段階からこの気道分泌物を除去することが重要で、本疾患の初期治療の重要性を強調したい。鼻汁吸引時に咳嗽反射を誘発し、より深部の喀痰を除去するのが望ましい。抗ヒスタミン薬は局所における水分漏出を妨げ,喀痰が濃縮される結果,高濃度の喀痰が「栓」の役割を果たし気道の閉塞を誘発しやすい状況になることが考えられるため、安易な使用は避けたいものである。中枢性鎮咳薬も喀痰排出を妨げるため処方したくない薬剤である。気道分泌物の除去により、臨床症状の改善のみならず喘鳴や湿性ラ音の消失あるいは経皮的酸素飽和度の上昇もよく経験される。当院ではプライマリケア医の機能性・機動性を生かして、毎日のように来院して気道分泌物の除去を行っている。粘度が高すぎて充分除去しきれていないと判断した咳嗽の強い児には、点滴施行後に再度気道分泌物の除去を行い、やっと充分量の気道分泌物が除去できることも多く経験している。